インタビュー

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先駆けるリーダーになるために

2014.12.31

社会をリードするためにふさわしい「志」とは

 

アジアナンバーワンのビジネススクール・ベンチャーキャピタルを目指し、
社会の創造と変革に邁進するグロービス代表の堀 義人さんの原動力や今後のビジョンとは?

 


アジアでナンバーワンのビジネススクールへ邁進

柴田 堀さんが独立なさったのは30歳の時ですね。ビジネススクールをつくることとなったのは、どんな経緯だったのですか。
 京都で大学生活を送っていたころにMBA、経営学修士の存在を知りました。取得したいとは思いましたが、そのまま商社へ就職。ただ、仕事を始めても、自分が将来どんなことをしたいかは、わからないまま。そこで、あらためて自分の生き方を探そうと、ハーバード大へ留学しました。
彼の地の教育方針とメソッドには感銘を受けました。日本の大学のように、教授が一方的にレクチャーするスタイルなどいっさいなし。とにかく議論を闘わせ、考える力や意思決定する力、答えのないところで最善の解を求めていく力、それらを発信するコミュニケーション力などを鍛え磨いていく。これは有効だと心から確信したので、帰国後に自分自身で社会人向けのビジネススクールを始めました。それが現在のグロービスの原型です。
柴田 船出は順風満帆だったのですか。
 規模はこじんまりとしたものでした。立ち上げの資金はわずか80万円。たったひとりでしたし、事務所はアパートの一室。教室は時間単位で借り、パンフレットはコピーして配り、受講生を集めるところから始めました。
柴田 当初の受講生は20名だったと聞いております。
 はい。それが現在では、MBA生としては年間入学者数が600人以上です。これは日本でナンバーワンの規模。教育内容などの各種ランキングでも常に上位の評価をいただいています。東京をはじめ全国に拠点が5つあり、2015年からはオンラインMBAも本格的にスタートさせます。英語によるMBAも、世界30ヵ国の学生を集めて実施しており、他に900社以上の研修を担当し、500億円以上のベンチャーキャピタルファンドを持つ、といった事業展開ができるまでになりました。
柴田 これほどの短期間で、日本では圧倒的な規模と力を誇るまでになられたわけですね、次なる目指すところはどちらなのでしょうか。
 アジアでもナンバーワンを目指します。長い伝統を持つ欧米のMBAには敬意を払いつつ、まずはアジアで一番となることに照準を合わせています。2025年にはアジア経済圏のGDPが世界の5割を大きく超えると予想されています。となれば、アジアナンバーワンは世界ナンバーワンということになりますから。
柴田 各界のリーダーが集い議論し、行動につなげる「G1サミット」も2009年から継続していらっしゃいます。立ち上げの経緯は。
 世界中のリーダーが一堂に会する「ダボス会議」に、過去11年間で7回参加してきました。そこで実感したのは、マルチステークホルダーによる会合は、世の中を変えるのに有効だということ。政治家、ビジネスパーソン、学者、メディアや行政関係を含めて、世の中を動かしている人たちがこれからの世界の方向性を定めて、行動していこうと宣言する。そうすることによって実際に、社会は前へ進んでいきます。そうしたサミットの場を日本にもつくり、世界を変える原動力にしようと考えたのです。
柴田 すでに6度の開催を重ねてこられたのですね。
堀 毎回、200~300人が参加しており、安倍晋三首相やノーベル賞の山中伸弥さんにも来ていただきました。「行動するリーダー」の集まりとして、ここを社会変革の基盤にしようと考えています。

 

「社会の絆」こそ日本社会の最大の強み

柴田 東日本大震災後の復興支援として、いち早く「KIBOW」という組織もつくっておられます。どのような活動を。
 震災3日後に立ち上げ、被災地を巡ってお手伝いをし、また義捐金集めも行いました。2012年からは復興造プランのコンペをしており、現地で復興活動をしようという方々にプレゼンテーションをしていただき、資金提供しています。各地にリーダーを置いて、地元に根差した活動を継続するしくみも築いています。復興支援については、JCも早くから取り組まれてますね。ぜひ協力しながらやっていけたらいいですね。
柴田 はい、ありがたいお話です。JCでは、2015年度の基本理念として、日本の底力を見せて地域から再興していくことを掲げています。日本と日本人が持つ底知れぬ力については、どうお考えでしょうか。
 「日本的」と呼ばれる考えや行動、特性はたしかにあります。島国に暮らす農耕民族であるがゆえに、粘り強く自然と向き合い、村という地域を核として協力し合って、阿吽(あうん)の呼吸でコミュニケーションをとりつつ、ものごとを改善していく。そんな力には非常に長けています。これは明らかに日本的な強みでしょう。逆に、地理的・歴史的要因からくる弱みもあります。狩猟民族ではなく大陸に住むわけでもないゆえ、大きな戦いというものに慣れておらず、戦略を立てるのが苦手です。同質性の高い社会でコミュニケーションが阿吽の呼吸でとれてしまうので、言葉を介したコミュニケーションやプレゼンテーション、交渉のテクニックに欠けるのです。
現代社会においても、日本的特性は色濃く出ています。ビジネスでは、研究開発は強いのにマーケティングが苦手で、戦略の部分で海外企業に後れをとってしまうことはよくありますね。文化的コンテンツを生みだす力にも長けているのに、積極的に発信する能力が弱いために海外でなかなか広まらないといったことも。そのあたりは、変えていくべきところです。戦略的思考や発信力の強化は、ぜひ伸ばしていかないといけません。
さらにもうひとつ、日本には圧倒的な強みがあります。それは震災の際に、はっきりと表れました。社会の「絆」の強さです。一対一で対峙すれば負けることは多々あるかもしれませんが、組織になるとやはり日本は強いのです。日々の出来事を考えていただければわかりますが、仕事や生活の場面において、一対一で戦うことなんてめったにありません。組織力に秀でた日本と日本人は、その強みを大いに活かし、高めていくべきですね。
柴田 社会の強い絆こそ、日本の底知れぬ力の根源にあるものなのですね。このたびは、わたくしどもの今後の行動へのたくさんのヒントと指針をいただきました。まことにありがとうございました。


WE BELIEVE

堀 義人 氏
ほり・よしと
グロービス経営大学院大学 学長
グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。
住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。
若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。
2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設し、2013年4月に一般社団法人G1サミットの代表理事に就任。
2011年3月大震災後には復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、代表理事を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。