インタビュー

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核心の追求 ~原 丈人氏インタビュー~

2015.03.10

日本を世界で最も必要とされる国にするために

 

従業員や地域社会などにも貢献し、企業価値を高める公益資本主義を提唱し注目を集める、原丈人さん。アメリカで創業したベンチャーキャピタリストが語る、世界で活躍するために進むべき道とは。

 

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懸命になって懐に飛び込む。それが物事を進める唯一の方法

柴田 20代までは考古学に打ち込んでいらしたとお聞きしました。かなりユニークな経歴ですね。
 今も考古学については、いろいろ調べたりして楽しんでいますよ。最近はどこの遺跡でどんなものが出ているか、いつもチェックしていて、文献や地図を集めています。自宅には、考古学専用の机を置いてあるくらいですから。
柴田 考古学の研究から起業家へ転身、しかも光ファイバーの会社を興すというのは、ずいぶん畑違いだったように思うのですが。
 考古学を続ける資金がなくなったので、ベンチャーを興そうと思ったんですよ。シリコンバレーに渡ったので、テクノロジーに関することで何かしようと考え、「土地勘」のあるものをと選んだのが光ファイバーでした。考古学で実地調査するときに、現場で光ファイバーを使っていました。
柴田 起業なさって、すぐに順調に事業は進んだのですか?
 いえ、そうはいきません。光ファイバーは新しい技術だったので、興味は持ってもらえるけれど、最後の最後で成約に至らない。このままじゃ会社がつぶれるかなというところまで追い詰められました。
それでも、営業に回って一所懸命説明するしか道はない。ギリギリのところで、何とか注文をもらえました。ひと息ついたのですが、すでに資金が尽きかけていて、注文分の材料を買い入れられないことがわかった。
そこで、預金通帳を持って注文主のもとへ赴き、現金がこれしかないんだと示して、注文を減らしてほしいと頼みました。すると、相手はそれならばと、注文を減らすのではなく前金をくれました。驚いた。キャッシュを持って逃げてしまったらどうするんですかと聞くと、いやお前はそんなことしないだろうという。通帳を見せて注文を減らしてくれなどと言うヘンなヤツは、だいじょうぶだ。余計なこと考えずに仕事に打ち込めと言ってくれました。
その注文を、納期に間に合わせたところ、これは珍しいと気に入ってもらえ、どんどん注文をくれました。納期に遅れるのがシリコンバレーではふつうだという常識を知らなかっただけなんですが。その後も、いろんな人に助けられて会社をやっていくことができました。
相手の懐に飛び込んで、裸でぶつかっていくこと。やはりそういう気概が大事なんじゃないでしょうか。
柴田 私も家業を継いだとき、まだ若かったときだからこそ、志ひとつで頑張ることができました。志を貫いて一生懸命にやっていると、その気持ちを感じ取ってくださる人がいるものなのですね。
 その通りだと思います。私もいろんな会社をつくってきて、もちろん失敗することだって多くありました。10のうち7つはうまくいかなかったりしますよ。
最先端技術でチャレンジするので、成功するかどうか見極めきれない段階での投資とならざるを得ないのです。そんなとき何を信じるか。自分が同じ姿勢で一所懸命取り組んできたことであれば、何とかなるだろうと考えられるし、周りはその一貫した姿勢を見ていてくれます。変わらず打ち込んでいることが、信用につながるわけですね。

 

日本語を使ってもらうことが、真の国際化へとつながる

柴田 かねて、株主資本主義はもう立ち行かなくなり、日本の価値観こそ世界のスタンダードになるとの主張を繰り広げられていらっしゃいますね。ひじょうに興味深い「考え方の転換」だと思います。
 企業にとって重要なものとは何でしょう。従業員、顧客などいろいろありますね。米国流の資本主義の考え方に則すると、株主へのリターンこそ最優先すべきこととなります。その数値を高くすればするほどいいことであると。
しかし、その考えが世界中で続いていくかといえば、そうではありません。米国が掲げるグローバリズムが進んだ時代は、20世紀ですでに終わっています。グローバリズムの源泉は植民地主義です。圧倒的に強い軍事力と経済力で、「遅れている」地域に西洋の流儀を広めていった。冷戦時代までそうした構造は続きましたが、すでに米国やロシアといった国に、かつてのような「重し」としての存在感はありません。
グローバリズムに取って代わって、これからは多様性の時代です。さまざまな価値観を受け入れ発展させていくことに長けている日本の伝統、文化とみごとに一致する考え方ですよ。ごく自然に多様性を意識し行動できる日本人が、いっそう広く受け容れられていくことになるはずです。
柴田 日本人らしい考え方がこれから普及していけば、日本の精神性が世界のスタンダードになる可能性があるのですね。
 そうです。ただし、相手の国の人たちが理解できるよう、日本のことを丁寧に説明する姿勢は必要です。単にいい、いいと言っているだけでは伝わらない。相手と我々には違いがあって、決して同一化することはできないという前提に立って、日本のよさを話し広めていく。そういう努力はより大事になっていきます。
柴田 そんな時代に、私たちJCメンバーが世界へと羽ばたくには、どうしたらよいでしょうか。
 まずはどんどん外へ出ていくことでしょう。今世紀、とりわけ伸びるのはアフリカであることは間違いない。そこは今のところ、大企業もあまり進出していない手つかずの状態です。若いのJCメンバーが自分で現地へ行って、状況を肌で感じて、それぞれの仕事に生かしていくといいのではないですか。
柴田 今年は、青年会議所の世界会議が日本で開かれます。世界へと目を向けるには格好のタイミングでもあるので、メンバー全員が広い視野を持つよう徹底したいと思います。
 自分が住み、経済活動をしている地域をよくしていこうというメンタリティを、JCメンバーは強く持っていますよね。そういう人たちが国際的な貢献に目を向けるのは、とてもいいことですし、効果も上がりやすいものです。足元をちゃんと見ている人は、先のほうまで目も届きます。
世界会議で日本に世界中から人がやってくるのであれば、ぜひ実践すべきことがあります。日本に来ているあいだ、外国人にはできるだけ日本語を教えてあげるといい。こちらが気を使ってひたすら英語を話してあげる必要はありません。ここは日本なのだから、「おはよう」程度でもいいので、言ってごらん、覚えてみたら? と促してやるのです。
日本のよさを知ってもらうには、文化に触れてもらうのが一番。そして日本語こそ、日本文化の真髄です。日本語を覚えてください、そう堂々と言える日本人が増えれば、そこに尊厳も生まれます。日本を知ってもらうため、日本語を話してもらう。それが 日本のよさを知ってもらうには、文化に触れてもらうのが一番。そして日本語こそ、日本文化の真髄です。日本語を覚えてください、そう堂々と言える日本人が増えれば、そこに尊厳も生まれます。日本を知ってもらうため、日本語を話してもらう。それがほんとうの国際化というものですよ。
柴田 ぜひ世界会議の際に実践したいと思います。他に世界のモノ・ヒト・カネを日本に流入させる仕組みづくりにも、積極的に取り組んでおられますね。
 そうですね。いろいろなアイデアがあって、すでに動き始めているものもたくさんあります。たとえば、難病の治療薬開発を画期的に進められる特区を国家戦略戦略特区として設けて、患者、家族、研究者、製薬ベンチャーを引き寄せる。ビジョンは山のようにあります。あとはやるだけ。日本の各分野のリーダーの方々と、考えを共有して進めていきたいと思っています。

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原 丈人氏
1952 年大阪生まれ。欧米を拠点にする日本人実業家。先端技術開発事業への出資と経営、研究開発研究者への助成、途上国の貧困問題解決のための事業などベンチャーキャピタリストとして活動。DEFTA PARTNERS グループ会長、国連経済社会理事会特別諮問非政府機関 一般財団法人アライアンス・フォーラム財団 代表理事、内閣府本府 参与、経済財政諮問会議 専門調査会 会長代理。

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